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連載コラム/ガンダーラ井上の「時計 なんて、時計だって」 #023 ISSEY MIYAKE Wのイニシャル “W”が発信するメッセージとは?

#023  ISSEY MIYAKE Wのイニシャル “W”が発信するメッセージとは?

この腕時計は、ISSEY MIYAKE W。三宅デザイン事務所とセイコーの協業により、世界で活躍するデザイナーの皆さんが独自のデザイン手法でISSEY MIYAKEのブランドスピリットを腕時計のデザインで表現するシリーズは2001年にスタート。本作はその中核をなすモデルです。

#023  ISSEY MIYAKE Wのイニシャル “W”が発信するメッセージとは?

ISSEY MIYAKE Wをデザインしたのは、前回ご紹介したISSEY MIYAKE Uの作者でもある和田智さん。実はこのWの方が先にデザインされたものだそうです。和田さんはアウディでカーデザイナーとしてのキャリアを積んだ後、2009年に独立すべく活動の拠点を日本へ移転。その直後にクルマの会社より先に舞い込んだのがこの仕事だったとのこと。

#023  ISSEY MIYAKE Wのイニシャル “W”が発信するメッセージとは?

イッセイさんには、「明らかにデザイナーが作り上げた“デザイナーズウォッチ”ではなく、普通の時計が作りたい」と言ったんです。毎日できる普通の時計。でも、その普通とは“特別な普通”である。そんなプレゼンをして『和田さんの好きにしてください』と言われた時は嬉しかったですね。それだけプレッシャーは大きかったけれど僕にとって原点回帰するような時計、W=watchを作りたかったんです。

#023  ISSEY MIYAKE Wのイニシャル “W”が発信するメッセージとは?

確かにISSEY MIYAKE Wは、デザイナーのアイデアをドヤ顔でアピールしてくる感じがせず、クロノグラフという時を測る道具としての骨格がしっかり作られている印象です。プッシュピースを上にして時計を見てみれば、この時計はストップウォッチでもあることが明確に認識できます。

#023  ISSEY MIYAKE Wのイニシャル “W”が発信するメッセージとは?

3時位置のリュウズは、標準よりもやや大きめでメカニカルなイメージ。本機に搭載されたムーブメントはVK67というクオーツ式なのですが、プッシュピースを押すと秒の計測針が機械式クロノグラフみたいな動きをするのが特徴。リセット時には小窓の分針・時針含め、ビシッ!とゼロ帰針するのもいい感じです。

#023  ISSEY MIYAKE Wのイニシャル “W”が発信するメッセージとは?

ISSEY MIYAKE WとUは、アダムとイヴ、もしくは東洋思想における陰陽の関係なのだと和田さんは語ります。デザイン的にはWは厚みがあり質量を感じさせるもの。それに対してUは軽く薄い。概念としてはWは建築的でフラットなのに対し、Uはオーガニック。正反対の感覚であるけれど、2つの腕時計の間には通底する世界観が感じられます。

#023  ISSEY MIYAKE Wのイニシャル “W”が発信するメッセージとは?

Wを側面から見ると、堂々としたボディの量感が伝わってきます。これはカーデザインを出自とする和田さんならではの仕事。自動車のホイールやピストンなどを想起させる円筒形のモチーフを、直径40ミリ前後という小さなサイズの腕時計の世界に凝縮して表現されているのだと思います。

#023  ISSEY MIYAKE Wのイニシャル “W”が発信するメッセージとは?

円筒形のモチーフはシンプルかつピュアで美しい。それを際立たせるべく、バンドをつなぎとめるラグの部分は別部品でボディと裏蓋の間に嵌合させるというユニークな構造。こうすることでボディの側面をぐるりと美しくヘアラインで仕上げることが可能になっています。

#023  ISSEY MIYAKE Wのイニシャル “W”が発信するメッセージとは?

さて、ISSEY MIYAKE Uの記事でも登場しました裏蓋の意匠。これは初代アウディTTのフューエルリッド(ガソリンを入れる蓋の部分)をトリビュートしたものなのだそうです。アウディから独立して間もない頃に、自らの体験や記憶を辿り、ある種の“お礼”として裏蓋のネジ止めはデザインされたのです。

#023  ISSEY MIYAKE Wのイニシャル “W”が発信するメッセージとは?

ケース内側の垂直に切り立ったサイドは鏡面仕上げ。インデックスが映り込み、見る角度によって空間が揺らぎながら消失点へ向かっているような反射が得られます。このディテールは言葉にすると複雑ですが“意識させるのではなく感じさせる”もの。まるで日本食の“隠し味”みたいな仕掛けを配することで、“特別な普通”を作り出す。ISSEY MIYAKE Wは、デザインの世界の奥深さを感じさせてくれる腕時計です。


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