Photo & Text:Gandhara Inoue
オーソドックスに対するエキセントリック。一風変わったスタンスで、世間では“常識”と呼ばれている判断や行動の範囲を少しだけ広げてくれる存在。腕時計の世界にも「これは普通の発想では作れないなぁ。」と唸らせてくれるエキセントリックなモデルが数多くあります。その特徴は、ズバリ見た目が際立って個性的であること。
エキセントリックな腕時計とは、要するにクワガタムシみたいにカッコいい腕時計のことです。何だかよくわからないけど、とんでもないカタチに進化してしまったクワガタムシの大アゴのシェイプに惹かれる。これはオトコのDNAに刻まれた習性だと思います。このマインドは、大人になっても消えません。
でも、大人になって職場にクワガタムシを持ち込むことは大低の場合許されることではないですよね。ところが、クワガタムシみたいにカッコいい腕時計なら、意外とすんなり受け入れられることが多いんです。不思議なものでクワガタムシみたいに個性的なデザインの靴ではNGというシチュエーションでも、クワガタムシ級のスタイリングの腕時計はOKだったりするものです。
あなたの袖口から、ちらりとクワガタムシが現れる。そのエキセントリックなシェイプに共感を示してくれる人が現れたら、それは現在の常識に安住することなく、尖りづらい世の中でも自分のセンスを信じて進む仲間に違いありません。
1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒。松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間務める。在職中から腕時計やカメラの収集に血道をあげ、2002年に独立し「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「日本カメラ」「ENGINE」などの雑誌やウェブの世界を泳ぎ回る。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。
常識って何だ? 突出しているからこそ美しいエキセントリックな腕時計たち。ちょっと行き過ぎかと思っても、個性が際立つ腕時計って意外と受け入れられるもの。エキセントリックな腕時計は、窮屈な日常を風通しよくするアイテムです。