Photo & Text:Gandhara Inoue
オトコの腕時計といえば、まずアタマに浮かぶのがこのジャンルですよね。
別にミリタリーマニアでなくても、航空機の操縦士を志していなくても、仮に思想的には自由主義者で徴兵とか困ります的な意見の持ち主でも、男子たるもの目の前に1660馬力のターボシャフトエンジンを2基も搭載した攻撃ヘリがホバリングしていたら「カッコいい‥」と悶絶してしまうものだと思います。
それは、自分の身体能力を遥かに超えた逞しい存在。自分のことを、いつだって守ってくれる頼もしいアニキみたいな存在。だからオトコは丈夫なブーツや機能的なアウトドア用品や強そうなレザー製品とかが大好きなんです。その流れの頂点に君臨するのがミリタリー&アビエーションという次第。
時刻を知るという時計に求められる本質的な機能を最優先しているから、よけいな装飾がない。タフな状況でも動き続け、身に付ける人間への負荷もできるだけ軽減すべくデザインされた機構や外観。
ミリタリーウォッチの魅力は、腕時計を『装身具』としてではなく、『必要不可欠な道具』として捉える潔さにあります。このテイストに、航空機の操縦に関わる専門的な機能を加えたのがアビエーションウォッチなのです。
とはいえ、この手の腕時計が持つすべての能力を使い切るのはプロフェッショナルにまかせて、その心意気を身につけるのがポイント。そうすると日常の機動力がぐんとアップしてくる気がします。
1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒。松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間務める。在職中から腕時計やカメラの収集に血道をあげ、2002年に独立し「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「日本カメラ」「ENGINE」などの雑誌やウェブの世界を泳ぎ回る。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。
作戦行動を成功させるべく、チームで正確な時刻を共有する。コックピットの計器に不測の事態が発生しても、その対処に必要な数値を腕時計から導きだす。
ミリタリー&アビエーションの放つ機能美は、男を示すフェロモンです。