いちど見たら忘れられない個性的なデザイン。思わず手にとって操作してみたくなる、カラフルな球体をあしらったボタンとりゅうず。この腕時計はフランスの時計メーカーであるLIPが、フランス工業デザイン界の巨匠、ロジェ・タロン氏とコラボして1970年代に作り上げたシリーズを源流とします。
フランスというと古風で伝統を重視するイメージがありますが、新しい技術を取り入れていくことを好む傾向もあると思います。エッフェル塔が建ったとき、世界中であんなに高い鉄塔は唯一無二だったし、シトロエンの自動車には極めてユニークな窒素ガスと油圧を使ったサスペンションを搭載している。フランス製の超音速戦闘機ミラージュの要素技術を応用し、英国と組んで超音速旅客機コンコルドを完成させ運用していた実績だってあります。
あらためてLIPのマッハ2000という腕時計を見てみると、デザインされた1970年代当時に輝く未来として夢想されていた21世紀を感じさせてくれます。エンジニアリングでもアートでもない立場から、工業製品を美学的な見地で磨き上げていく。誰も追いつくことなんかできない音速の2000倍のスピードを持つデザイン。本当にいい仕事は、いつまでも色あせることがありません。定番なのに尖っているマッハ2000は、未来に向かって楽観的に進むパワーをボクたちに与え続けてくれると思います。