新しい技術や素材が出てくることで、新しい表現が生まれる。そして、それがいつの間にか当り前になっていくことってありますよね。
たとえば、映写機材を使ってコンピューターグラフィクスを建物や物体、空間などに映し出すプロジェクション・マッピングもそのひとつ。これは主に数多くの人々が集まる場所で行われることですが、もっと個人的な持ち物に応用していくような未来があってもおかしくないと思います。
私たちはすでに20世紀からTシャツにさまざまなグラフィクスをプリントして、衣類をメッセージボードと同等もしくはそれ以上の効果を発揮するメディアとして使ってきました。この方法論を用いて、自分の持ち物である腕時計にコンピューターグラフィクスを映し出してしまおう。というのがFES Watch Uのコンセプト。Tシャツは主にコットンやポリエステルでできていますが、この時計は電子ペーパー製。だから腕時計本体に記録してある画像をボタン操作ひとつで切り換えられたりもするんです。
まだ技術的にモノクロ表示しかできないので、すべてのグラフィックスがモノトーンなのも渋いし、過渡的で最先端な匂いがします。モノクロのトーンで抽象化された個性的なグラフィックスの示すもの。それは腕時計全体に投影(プロジェクション)された、ユーザーのセンスそのものなのだと思います。